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第1回 栄光の軌跡 (キセキ)①

WIN!競馬をご利用の皆様、はじめまして。
元JRA調教師の角居勝彦です。私は現在、引退した競走馬をはじめとした馬の多様な利活用を進めることにより、馬と人が身近になる社会の構築を目指して、引退馬の支援活動をしています。そしてこの度、以前からご緑のあるWIN!競馬にて私が管理していた元競走馬の現役時代の思い出話や、競馬に関する考え方についてコラムを書かせていただくこととなりました。
第1回はWIN!競馬にたくさんのファンがいると聞いている「キセキ」のデビューから菊花賞までを振り返りたいと思います。


もともとキセキの母ブリッツフィナーレは角居厩舎に入る予定でしたが、爪の病気の影響で競走馬になることを断念。その後、下河辺牧場に繁殖入りし、3番仔として生まれてきたのが、のちのキセキになります。
そしてご縁のある石川達絵オーナーがキセキを購入してくださることになり、私が管理させていただくことになりました。皆さんご存知の通り、キセキの父ルーラーシップは香港G1を制した私の元管理馬。父母ともに私と縁があること、そして私自身が下河辺牧場の生産馬や石川オーナーの管理馬で大きな結果が出せていなかったこともあり、キセキの関係者のためにも何とか良い結果を…という想いがかなり強かったと記憶しています。

キセキはデビュー前から水準以上の動きをしていました。しかし、私の厩舎は追い切りで目一杯には攻めないので実戦にいってどうかな…といった感じなので、新馬戦に関しては半信半疑ではありましたけどね。しかし、終わってみれば3馬身半差の1着。こんなに走るのか!と少し驚いた記憶があります(笑)

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しかし、新馬後はトントン拍子に2勝目を挙げることができず。
そもそもキセキのような長いストライドで走る馬ほど、体全体を大きく伸ばして走るので背中に負担がかかりやすい傾向にあります。
キセキについては、背中の疲れを見ながらじっくり育てていかなければいけない意識がすでに芽生えていたので、 毎日杯(僅差の3着)で良い競馬をしてくれましたが、背中への負担と体の成長を促す目的で休養へ出しました。

帰厩後のキセキはしっかり疲れも取れていて、筋肉の成長も見受けられましたね。背中もしっかりして、これはいい休養になったな…と実感した記憶があります。
復帰戦は1勝クラスでしたし、毎日杯の内容から当然期待はしていました。
むしろ秋に向けて菊花賞トライアルに挑戦することを前提にしていたので、復帰戦に関しては6割ほどで仕上げて、そこから徐々に上げていければ…と考えていましたね。
そして思惑通りに復帰戦を勝利で飾り、信濃川特別(2勝クラス)で2連勝。この時、デムーロ騎手に初めて乗ってもらったのですが、レース後に「ずっと乗せてください!」と言われたような記憶があります(笑)

続いては菊花賞へ向けての登竜門である神戸新聞杯に引き続きデムーロ騎手とのコンビで出走。ここまで、期待通りの成長曲線を描いてくれていたキセキですが、 世代のトップクラスが相手となるとそう簡単ではなく、勝ち切るまではやはり難しいなと、肌で感じましたね。
とはいえ、結果はダービー馬レイデオロの2着。無事に優先出走権を確保できたことが何よりでした。

菊花賞当日は豪雨の影響で不良馬場。キセキ自身、道悪馬場は初めてでした。
一般的にストライドが大きい馬は道悪=マイナスというイメージを皆さんもお持ちかもしれませんが、ストライドが大きい馬の走法は大きく分けて2種類あります。

1. 脚を低空で振って着地
2. 脚を高く上げて上から地面を掴むように着地

ストライドが大きくても脚を低空で振って着地する馬は前すべりして怖くて脚を伸ばせない傾向にありますが、キセキは脚を高く上げ、大きく飛んで上から地面をつかむタイプですので、不良馬場もキセキにとっては明らかにマイナスという考えはなく、うまくこなしてくれないかな…程度にしか考えていませんでしたね。
作戦についてはデムーロ騎手にお任せ。2戦乗ってもらってキセキの特徴を掴んでくれているという信頼がありましたから。
菊花賞後は達成感というよりも関係者の皆さんの期待に応えることが出来たという意味で、プレッシャーから解放されてホッとした気持ちになったことを覚えています。

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今回はキセキの新馬戦から菊花賞までの道のりを振り返りました。
次回は菊花賞後の香港遠征から私が調教師を引退する2020年有馬記念までの思い出話しをお届けできればと思います。

次回:10月頃に更新予定(※変更の可能性あり)